タイシルク織物が出来るまで

桑の葉を育て、蚕を飼い、繭から糸を引き出し、糸を紡いで
タイシルクを織り上げていく過程を説明したいと思います。

農村の女性達が手塩にかけ、布に対する情熱を持って織る、
手織りの暖かいぬくもりを感じていただければと思います。

桑の畑◇ 


シルクを作るのには蚕を飼わないと作れません。
蚕は桑の葉を食べるので蚕の餌になる桑の葉を作ります。

桑の葉を育てている畑。
雨が降らない時もあるので、灌漑用水は重要な施設です。


左側:蚕が桑の葉を食べて成長していくところ。右側:蚕が大きくなり、繭になるための住まい。

蚕を育てている丸い盆はカローンと呼ばれている籠です。
蚕を虫から守るための防虫用に布を被せています。

繭にする時には渦巻状の仕切りがあるジョーと呼ばれる
丸い盆に移して繭を作らせます。


左側:蚕の卵、
右側:繭になった蚕から、大きな繭を選別してより質の高い蚕を養蚕していくそうです。

黄色い繭は日本の繭とは異なる野蚕系のインドシナ半島特有の蚕繭です。

糸繰り(繭から糸を繰る)


繭を茹でて生糸を紡ぎだしているところ。
繭の糸はセリシンと呼ばれるもので固められているので、
セリシンを軟らかくして生糸を繰り糸車に巻き取っていきます。


紡ぎ出した繭の中から蛹が出てきます。
この蛹は食用になり、タンパク質源になります。


紡ぎ出したばかりの糸を干しています。

紡いだ糸は大きく三つの種類に分かれます。
繭の一番外側の部分、繭の中の中間の部分、そして、繭の一番奥の部分に分けられます。
一番外側が糸の太さが均一でなく太めで、中間は均質になってきます、
一番奥は均質でしかも細い糸になってきます。


繭から紡ぎ出されたばかりの生糸はかなり黄色いですが、
生糸についているセリシンを湯通しして落とすと少し白っぽくなります。
生糸の表面のセリシンが多いと染色し難くいのです。

村で紡ぎだされた生糸には蚕が繭になる時に取り込んだゴミや
生糸を干している時に付いたゴミがあり、
この葉屑はゴミなどをそのまま織りこんでしまうので、
出来あがった織物の繊維の中にいろいろな物が入っていることがあります。
これが手織りの良さと言うか、おおらかな品質体制です。


生糸を製糸してシルク糸を染色する前の糸束を作るところ。生糸を糸車に掛けて製糸しているところ。 


製糸された糸を染色するために、糸括りするための糸束を作っている。 


シルク糸を紐で括って染色の柄を作っているところ。
染める部分と染めない部分を分けることにより柄が出来ます。


昔の柄や前に織った布を参考にしながら糸括りをしている。
図面も参考布も無く、括る人の頭の中の図案だけで括っている場合もある。
ある一人の人の頭の中にしかない織り柄はその人が亡くなった場合に
永遠に失われしまうこともある。

この括りの作業はとても大変と思います。
この括りの作業による出来具合が染色に大きく影響してくるからです。

昔はこの括る紐はバナナの皮で作った紐を使っていた。
今はビニール紐を使って括っています。

糸を染める経糸と緯糸との組合せにより、経絣、緯絣、経緯絣と分けられます。
経糸と緯糸の両方を括って色柄を作る経緯絣はもっとも手間の掛かる手法です。


自然の草木実などの染色材料。

色を染色する染料としては自然染料や人工染料が使われますが、
染色の手間と色落ちのことから、現在では一般的に人口染料が多く使われています。



染色を行う工房。
染色するために色々な鍋釜があります。


括った糸を染色して干してまた括り直して行く作業があります。
織りの色数分を括り直すことになります。
この手間が大変です。


染めた糸から機織機に掛けております。
若い人が比較的、柄の具合が難しくない物を織っています。
凝った伝統的な柄は年配の人が織っていました。


タイシルクの伝統的な織物であるマットミーと呼ばれる独特の柄を
年配のおばあさんが一生懸命に織っていました。
マットミーと呼ばれる織り物は布の端に段々と細かくなる柄が
入っているものを言っているようです。
マットミーは色柄が複雑なので、
織るのに経験が必要なので、年配の人が織っていました。


織りながら、経糸の具合を調整しています。


マットミーと呼ばれる織物を織っています。 



母親から娘へ、おばあさんから若い人へと
伝統的な織りを伝え、織物文化を継承していかないと
この美しい手織りのタイシルクが失われていってしまいます。


機織りの風景。 



織りあがった色々な織物。
実に多種多彩な手織りタイシルクがあります。


織り元のあるタイ東北地方のバスターミナルで見かけたマットミーを身に付けている女性たちを見掛けました。

日常生活の中で、伝統的な織物であるマットミーを着ているのを見ると、
手織り織物文化がまだまだ、一般生活の中に残っているのだなと思いました。

こうした伝統織物を着ている人を見ると、
私も元気をいっぱいもらった感じがします。